カフェやホテル、空港などで使える便利なフリーWi-Fi。以前の【カフェや街中で危険?】無料Wi-Fi(フリーWi-Fi)を安全に使うための基礎知識と対策という記事でも、「外出先で安全に通信するならVPNを使うのがおすすめ」とご紹介しました。
また、リモートワーク(在宅勤務)をしている方なら、会社のパソコンで「社内システムに繋ぐときはまずVPNに接続してね」と言われたことがあるかもしれません。
でも、いざ説明しようとすると「そもそもVPNって一体なにをしてくれる仕組みなの?」「スマホの無料VPNアプリって入れても大丈夫?」と迷ってしまいますよね。
この記事では、VPNの仕組みを初心者向けにわかりやすく噛み砕きつつ、あまり語られない「無料VPNの落とし穴」と正しい選び方を解説します!
VPN(仮想専用線)とは?(一言でいうと)
VPNとは「Virtual Private Network」の頭文字をとった言葉で、日本語では「仮想専用線(かそうせんようせん)」と呼ばれます。
一言でいうと、「誰でも通れる公道(インターネット)の中に、あなた専用の『外から見えないトンネル』を仮想的に作って通信する技術」のことです。
本来、会社の拠点同士や自宅と会社を「物理的な専用ケーブル(専用線)」で直接繋げば誰にも覗き見されませんが、それには莫大な工事費用がかかります。そこで、普段使っているインターネット回線の上に「暗号化の技術で仮想的な専用トンネル(VPN)」を作ることで、まるで専用ケーブルを引いたかのように安全に通信できるようにしたのです。
第5回の「HTTPS」と「VPN」は何が違うの?
前回の第5回「暗号化とHTTPS」を読んでくださった方は、「あれ?WebサイトがHTTPS(鍵マーク)になっていれば通信は暗号化されるんだよね?じゃあVPNはいらないんじゃない?」と思うかもしれません。
実は、HTTPSとVPNでは「守ってくれる範囲」が大きく違います。
| 比較項目 | HTTPS(Webサイトの暗号化) | VPN(通信丸ごとのトンネル化) |
|---|---|---|
| 守る範囲 | ブラウザで見ている「対応Webサイトの中身」だけ | スマホ・PCから出る「すべてのアプリの通信」丸ごと |
| アクセス先(どのサイトを見たか) | Wi-Fiの管理者やプロバイダに「どのサイトへアクセスしたか」は見える | トンネルで包まれるため、Wi-Fi管理者からもアクセス先が見えない |
| 発信元の住所(IPアドレス) | 自分の現在地・回線のIPアドレスがそのまま伝わる | VPNサーバーのIPアドレスに変わる(自分の回線元を隠せる) |
つまり、街中の無料Wi-Fiを使うときにVPNをオンにすれば、ブラウザだけでなくバックグラウンドで動くメールアプリやスマホアプリの通信も含め、Wi-Fiの電波を盗聴している人や偽Wi-Fiの設置者から「何のアプリでどこに繋いでいるか」すら完全に隠すことができるのです。
【要注意】「完全無料のVPNアプリ」が危険な理由
ここで絶対に知っておいていただきたい注意点があります。
App StoreやGoogle Playで「VPN」と検索すると、たくさんの「完全無料VPNアプリ」が出てきますよね。
しかし、運営元がはっきりしない無料VPNを使うのは、フリーWi-Fiをそのまま使う以上に危険な場合があります。
トンネルの「出口」を持っているのは誰?
VPNを使うと、あなたの通信はすべて「VPN運営会社のサーバー」を経由してインターネットへ出ていきます。カフェの周りからは見えなくなりますが、VPNの運営会社からはあなたの通信経路が丸見えになります。
サーバーを維持するには毎月大きなお金がかかります。それなのに「完全無料・無制限」で提供している怪しいアプリは、どうやって儲けているのでしょうか?
- 通信履歴や個人データの売却: あなたがいつ、どのサイトを見て、どんなアプリを使ったかという行動データを収集して第三者に転転売しているケース。
- マルウェア(スパイウェア)や広告の埋め込み: アプリ自体に不正なプログラムが仕込まれていたり、通信の途中で勝手に広告を差し込まれたりするケース。
- 他人の通信の「踏み台」にされる: あなたのスマホ回線を、他の誰かの通信の中継地点(踏み台)として勝手に貸し出す仕組みになっているケース。
安全にVPNを使うための3つの選び方
個人で外出先や旅行先でVPNを使いたい場合は、以下のいずれかを選ぶのが鉄則です。
- スマホや契約サービスの標準機能を使う:
- iPhoneでiCloud+(月額150円〜)を契約している方は、標準機能の「iCloudプライベートリレー」をオンにするだけで、Safariの通信がVPNと同様に保護されます。
- Google Pixelシリーズや大手セキュリティソフト(ノートン、カスペルスキー、ウイルスバスター等)に付属しているVPN機能も信頼性が高いです。
- 自宅のWi-FiルーターのVPN機能を使う:
- 少し中級者向けですが、自宅のWi-Fiルーターに備わっているVPNサーバー機能を使えば、外出先から「自宅の安全な回線」を経由して無料でネットに繋ぐことができます(その際もWi-Fiルーター自体のアップデートは忘れずに!)。
- 信頼できる大手の有料VPNサービス(ノーログポリシー)を選ぶ:
- 専用VPNを契約する場合は、「ノーログポリシー(ユーザーの通信記録を一切保存しない方針)」を第三者機関の監査で証明している実績ある有料サービスを選びましょう。
まとめ:VPNは「誰のトンネルを通るか」が一番大事!
- VPN(仮想専用線)は、通信全体を暗号化のトンネルで包み、フリーWi-Fiでの覗き見から守ってくれる強力な技術。
- ただし、出所不明の「無料VPNアプリ」はトンネルの持ち主に情報を抜かれるリスクがあるため避けるのが鉄則。
- そもそも大事なログインやネットバンキングをする時は、フリーWi-Fiを切って「スマホのモバイル回線(4G/5G)」を使うのもシンプルで確実な対策!
これでStep 2「ネット利用と通信の裏側を知る(第4回〜第6回)」は完了です!
次回(第7回)からはStep 3「攻撃の仕組みと守りの基本原則」に入り、攻撃者がどうやってパスワードを破るのかを暴く「ブルートフォース攻撃(総当たり攻撃)と辞書攻撃」について解説します!


