このブログは私がとある夏の日に実際に経験したことである。
この話をもとに同じ目に遭わないように教訓にしてもらえれば幸いだ
道民や地方民の方は分かると思うが、都市部から少し離れたところにあるガソリンスタンドは夕方になるとその日の営業を終了してしまう。
北海道の場合は札幌は24時間営業の店舗がありがたいことに沢山あるがそれ以外の都市部はというと旭川、函館に何店舗かあるだけだ。
そして閉店時間がどこも大体18:00、速いところは17:00などになっている。
つまり、道内をガソリンエンジンを搭載した乗り物で移動するには、17:00までにはガソリンを満タンにしておくか、宿にたどり着き移動を終えなければならない。
さもなくばガス欠で移動が不可能になってしまう。
四輪車であれば日が落ちた頃に適当なパーキングエリアや道の駅で車中泊をするという選択肢もあるかもしれない。
だが二輪車はそうはいかない。夏でも北部だと暖房が必要なほど冷え込む日があるし、なにより野生動物の危険があり、下手すると命に関わる。
こういった理由から北海道を公共交通機関以外で移動する際には、事前に給油計画やルート設定を行うこと、必要に応じて宿泊の手配をすることが重要になる。
当然私も今までの平均燃費とGoogleマップのガソリンスタンド情報を見比べてルートを考えていた。
だが、計画時点でこのルートは破綻していたのだ。
不可能なルートだということにまだ気がついていない私は自宅へ向けて走っていた。
そうして予定していたガソリンスタンドが”あるはず”の住所に到着。
おかしい。Googleマップでは営業中になっているにも関わらず、どう見ても営業していない。
閉店して数年経っているようにさえ見える。
かなり焦ったが、まだこの先30kmほど行けば閉店時間に10分程度しか余裕がないが一店舗ある。
そこで給油して満タンにすれば250kmほど走れるし、その先には24時間営業のガソリンスタンドもある。
そうして別の店舗へ向けて走り出したが、運悪く渋滞に捕まってしまった。
この時点でガソリンスタンドにたどり着く可能性は完全になくなった。
営業開始時間まで待つことが出来れば良いが、寒い上に周りには集落なども無く動物に襲われる危険があった。
今日の営業は終了しているがガソリンスタンドがある小さな町を地図上に見つけ、「人の気配があるだけでも今いる場所よりかは幾分マシだろう」と思い、ガソリンをセーブする走り方を心がけつつ向かうことにした。
無事に町へ辿り着いたが非常に寒く、手がかじかむほどであった。
これは朝まで耐えられないというので近くの民家に朝まで寝る場所を提供してくれないか頼んでみた。
なんとか心優しい方に泊めてもらうことが出来た。
本当に有り難く、当時のことは今でも鮮明に記憶に残っている。本当に感謝してもしきれない。
その方は夜に町役場などの見回りをされている方で、このあとその仕事へ向かうらしい。
私のような素性のわからない者を家に1人で居させるのはお互い良くないので、その仕事に同行させてもらう事になった。
ワゴン車に乗せてもらい移動中、助手席の窓のすぐ外で何か動いたような気がした。
チラッと横を見てみるとワゴン車の窓ほどの高さに藪の中へと入っていく巨大な毛の塊があった。
一瞬でそれがヒグマだと分かった。
推定で体高1.5mほど。体長は分からないが、体高の倍程度あるらしいので3m程度はあるだろう。
車内から見ただけ生身ではない安心感があったが、「こんなのに襲われたらひとたまりもないな」という思考が瞬時に脳内に響いた。人間の動物としての本能的な畏怖に近いものというべきだろうか。
運転していた現地の方に「今、ヒグマいましたよ」と伝えたら「あ、ほんと?そこそこ見るよ」と日常茶飯事かのような反応だった。
次いで「こういうのって民家に近いところですけど、駆除とかってしないんですか?」と聞いてみたら、「まだ駆除はしないね。人に被害が出てからやる感じかな」という感じであった。
何かあってからだと遅いのではないかと思ったが、いろいろ話を聞いていくうちにその理由も分かった。
町の高齢化が進み昔からの猟師の方がお年を召されたり亡くなられたりし、更に追い打ちをかけるように過疎化が進み後継者も少なくなくて対処が難しい背景があるとのこと。
更に過疎化の影響でクマがが人里に降りてきてしまっているようだ。
話の最後に「この町もあと10年後には誰もいなくなるかもしれない」と仰っていた。その話し口調は単に人が減っているから無くなるというだけではなく、現実味とものすごい重みを感じた。
これは後日私の趣味である地図や地形図の閲覧をしていたときに分かったことだが、お世話になった町のすぐ近くに集落があったが昭和に無人化してしまったようだ。
今では集落跡は跡形もなくなり木々が生えさも人は昔からいなかったかのように自然に還ってしまっているあの集落のことを思っての発言だったのかもしれない。
この経験は今後の私の人間活動、創作活動に大きな影響を受けるものになると思う。
普通では出来ない貴重な経験をさせてもらったことに非常に感謝している。
この場を借りて御礼申し上げます。
そして最後に、北海道で移動するときは、イレギュラーが発生しても大丈夫なように本州での移動よりも余分にガソリン携行缶を持ち運ぼう!
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